今は昔、インドに須彌羅と呼ばれる修行者がいました。
あるとき、須彌羅の事を気に入った王様が
「欲しいものはあるか?なんなりと望みの物を申せ」と伝えると須彌羅は王様に
「これから寺を立てる為に土地をいただけませんか?」とお願いした。
王様はさっそくその願いを受け入れ、「須彌羅がどれだけ欲しいのか分からないから行き着いたところまでを、須彌羅の寺院の土地と進ぜよう」
須彌羅はこれを聞くと、直ちに身軽な服装で走り始めた。
休むことなく走ったので、徐々に疲労を覚えた。しかし、寸尺でも余計に土地が欲しかったので、へとへとになりながらも、なお走ることを止めなかった。
最後には一歩も足が出ず、ついには地上に倒れこんでしまった。
それでも地に臥して、転げたり、這ったりして前に進み、もう一歩も進めなくなったので、彼は、手に持った杖を前方に投げて、
「この杖の行き着いたところまでが俺の土地だ」と叫んだと言ったお話。
「もっと、もっと」と人間の欲に果てがない。
知心寺 住職 眞田 正適
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