王様になって三日程経った時、靴直しは完全に疲れ果てて自分が現実なのか、夢を見ているのか訳が分からなくなり侍女にお酒を持ってくるように要求し、靴直しはお酒を飲むと酔っ払って寝てしまいました。
王様は再び家来に命じて靴直しが着ていた王様の服を脱がせ、元の粗末な服に着替えさせて靴直しの元の家に運ばせました。
目を覚ました靴直しは、自分の家であることに安心していつもの通りまた仕事に取り掛かりました。
そこにまた王様が粗末な服を着て訪れて言いました。
「仕事に精が出るね。」
靴直しが
「この間あなたが飲ませてくれた酒に酔って寝ている時に王様になった夢を見たよ。
王様は楽で楽しい仕事だと思っていたがとんでもない。あんな仕事が1ヵ月も続くと死んでしまうね。 この世で一番楽しい仕事はこの靴直 しの仕事だということがよく分かったよ。」
靴直しが生き生きと働いている姿に王様は満足して店を後にしたのでした。
(六度集経)
隣の芝生は青く見えるというように誰も他人の仕事はよく見えるものですが、やってみればどの仕事も苦労があります。
輝いて見えるのはあくまでもその人の一部分にしか過ぎない。
知心寺住職 眞田正適
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