眞田正適の心書

住職の心書495.地獄の場所 1/2

ある時、武士が僧侶に質問した。

「地獄だとか,極楽などというものが本当にあるものかどうか疑っております。もしあるとすれば,何処にあるのかお教えいただきたい」

この質問を受けて、僧侶は
「お前はそれでも武士か?武士ならば武士らしく振る舞ったらどうだ。それを地獄の場所が何処にあるのかだとそんなことを尋ねるようではお前はきっと腰抜け武士であろうな」

この言葉を聞いた武士は,頭に血がのぼり,「何を申すか。武士にむかって腰抜けとは無礼にもほどがある。いかに僧侶といえども許す事は出来ない」と,刀の柄に手をかけ、刀を抜こうとした瞬間。

「そこが地獄だ!」と僧侶が大きな声で一喝した。
 この一喝によって武士はハッと気付いて刀をおさめてその場に座り、
「地獄の場所が理解できました。一時の怒りで身を滅ぼすところでございました。お教えありがとうございました。」と言って僧侶に深々と一礼をしました。

僧侶はその武士の姿を見て、
「そこが極楽の場所だ」とにっこり笑った。

知心寺住職 眞田正適

眞田正適

眞田正適

中学校を卒業してから高野山にて十年間 真言密教を学び、行を経て地方寺院にて長年奉職するもコロナウイルス感染症が流行により、辞職することになる。 自分自身に何ができるかと自問自答していた時に、知心会代表である岡本真太郎と出会い、「皆が共に学び、共に成長できる場所を作りたい」といった想いに感銘を受け、知心寺を興し、知心寺住職を拝命する。 日々綴っている「住職の心書」では、仏教の教えをもとに心を豊かにする言葉を発信している。

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